以前に在籍していた会社で、経営者の方から「なぜ人のフォローが必要なのか?」と聞かれたことがありました。
その時は「組織には人が大事だから当然フォローして、定着率を高めたほうがいいでしょう」と感情で物事を言っていました。
立場が経営者になり、見える世界が少しずつ変わってきました。今回のブログでは、「なぜ人材の定着率を上げることが大事なのか?利点について経営視点で考えてみる」をテーマに考察してみます。
採用コストを抑えて他に投資できる
人が定着する組織では、採用コストを抑えることができるので、未来に向けた他の投資をすることが可能になります。
人が辞めないため離職による人員補填の採用活動を行う必要がないので、未来のありたい姿・状態を見据えて、伸びしろのある人材を採用・育成するための投資に回すことができる。
未来の理想の状態を見据えた人材を採用して、しっかり育成する余裕が生まれるので、会社全体を確実に次のステージに引き上げることができます。
経営視点では手持ちのキャッシュを、未来に向けた準備にどれだけ回すことができるのかが重要になります。この視点を考えるだけでも、人が組織に定着することで得られるメリットはあります。
教育コストが抑えられる
人を採用すると、その人の力を発揮してもらうために入社後に入社時のオリエンテーションや現場でのOJT研修などの教育が行われます。
しかし、残念ながら人が辞めてしまうと、入社時から辞めた時点に至るまでに会社がその人に費やした教育のコスト全て無駄になってしまいます。入社時には歓迎ランチ会や飲み会などを行うこともあるとは思いますが、その時間も含めて全て無駄になってしまいます。
またこの問題はタチが悪い面があります。
そもそもいる社員の仕事のうち、一部を切り崩して新たに入社した社員に仕事を引き継いでもらうことになります。仮に新たに入社した社員が先に辞めた場合、どういうことが起きるでしょうか。
仕事を引き継いだ先の社員がやめた場合、その社員が持っていた仕事はもともとのその業務をやっていた社員が再び引き継ぐケースが多くあります。
しかし、先輩社員は仕事を引き継げて空いた分、別の仕事に着手することになります。そこに辞めた社員分の仕事(引き継げたはずの仕事)を引き受けることになります。明らかにキャパシティーオーバーになり、結局は元々いた社員も辛くなって退職することになってしまうという事例を数多く見てきました。
人が定着し辞める人が少なくなることで、直近で入社した人が次に入社する人に仕事の進め方や、環境、人間関係などについて教えてくれるようになります。必然的に人の教育コストはどんどん低減していきます。
心理的安全性が確保される
新卒の採用している企業では必ず耳にしたことがあると思いますが、新卒で退職を考えている人に「そもそも転職を意識したタイミングとはいつからか?」と聞くと「同期が退職した時」という答えが返ってくることがしばしばあります。
想像以上に仲間の退職は人の心に影響を与えています。既存の社員が会社に残ってくれるため、新しく入ってくる社員に仕事の進め方などを教えてくれる。教え合った仲間同士が社内にいつもいる。これが社員の心理的安全性につながります。